「間違いだらけの政府の「働き方改革」~一億総自営時代の対処策」 山中俊之

The Voicers Report は、世界各地で活躍する10人のゴーゲッターで構成された The Voicers が各々の活躍の現場から情報発信をしています。今回は、神戸発日本へ、世界へ、リーダーシップとイノベーションを説く元外交官の経営者山中俊之さんです。

 

政府の打ち出している「働き方改革」。実にひどいと思う。

様々問題があると考えるが、私としては特に2つの点を提起したい。

第一に、「働き方改革」といっても、前提としてグローバル競争力が向上しないと経済は決して良くならない点が看過されている。

不要な残業を減らしたり、休暇をとることで生産性が向上することはあるだろう。

しかしそもそもの問題として、経営者や社員の市場価値が高まらないと意味がない。能力開発という視点が、すとんと欠落している。(イノベーションを促すようなガバナンスやダイバーシティ推進、遅れているIT投資を通じたリストラクチャリングなど多種多様な論点があるが、「働き方改革」の論点から若干離れるので割愛する)時間で管理することは一部の定型的な職務を除き意味がないのだ。

第二に、企業に雇われる被雇用者を前提にしている点である。

UberやAirbnb、あるいは日本でも隆盛してきている「クラウドワークス」や「ランサーズ」などのクラウドソーシングを見るようにこれからは独立請負人の役割がどんどん加速する時代である。20世紀型の企業による被雇用者としての雇用を前提として、「雇用しろ」「残業を減らせ」といっても時代錯誤になってきているのだ。

この「能力開発軽視」と「企業での雇用に焦点」の2つの論点は奥底でつながっている。なぜなら、日本企業の場合、企業に正社員として入れば、湯でカエル現象が生じて、能力開発を軽視してしまうからだ。

我々ゴーゲッターは、これら「能力開発軽視」も「企業雇用に焦点」も乗り越えていく必要がある。

では、いかなる時代になるのであろうか。

私は、これからの21世紀は「1億総自営の時代」であると思う。社会において、独立した請負人の比重が増え、仮に企業に属していても自営できるくらいの能力がないと解雇される時代になると考える。

もう少し具体的に根拠を述べたい。

そもそも雇用されるというのは、封建時代には、武士など一部を除き稀であった。この原稿を読んでいただいている読者の4,5代前のご先祖様は、自営業の農業や商工業を営んでいた方が多かったのではないだろうか。雇用というのは、この100年ほどあまりで一般化した働き方にすぎないのである。

一方、企業は激変する世界の中で、終身雇用はもとより長期的な安定雇用について大変なリスクを抱えるようになった。また、時間単位で換算されるような職務はITやAIで代替されるようになり、重要性が低くなった。結果として、雇用ではなく請負が徐々に増えることになる。

請負というのは、「請負人がある仕事を完成することを約し、注文者がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを内容とする契約(民法632条)。」と定義されている。今後時間単位で支払われるような仕事はどんどんとAIに移行していく中で、仕事の結果に対して支払われる請負は、プロフェッショナルにぴったりの契約形態なのである。今後大きな流れとしては、雇用から請負(又は請負と類似点も多い委任)に移っていくだろう。

もっとも、優秀な人材は長期的雇用の正社員でないと雇えないという声もあるだろう。そのようなケースのすべてを一切否定するわけではない。しかし、少なくとも世界では優秀な人間こそ短期で成果を上げることを望むものである。

また、多くの人には厳しい発言で大変に言いにくいことであるが、これからの激変の時代は、同じ会社に長期的にいることが視野を狭めてしまうリスクにも配慮しないといけない。元マッキンゼーでリーダーシップ論の泰斗である小杉俊哉氏は、ある講演で「これからは転職経験がないと経営者はもちろん管理職も難しい」と述べておられた。全く同意見である。

契約の形態は、必ずしも本質的ではない。請負的な仕事の結果に責任を持つことができるような働き方をすることである。これが1億総自営時代の働き方である。

では、我々ゴーゲッターとしてはどんな対処策を実践すべきなのであろうか。

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第1に、会社に頼らないと堅く決意することだ。

これは、何も「会社をすぐに辞めよ」とか「会社の業務を軽視せよ」ということではない。何事も会社の責任しないということである。給料、異動、残業、経費などに不満を持ってはならない。会社に頼るつもりはないのだから。

会社の不満を言うくらいなら「会社から給料をもらうのでなく会社には大いに稼がせてあげている」「会社には大いにお金を入れている」という感覚を持つくらい実践することである。

「これは会社の経費で落ちるから」といった言動も、ご法度である(個人事業主の経費なら良いだろうが)。このようなサラリーマン根性が会社も個人もダメにする。むしろ自腹でどんどんと動くくらいでないといけない。

第2に、取締役にならないのであれば一定の年齢になったら、会社には雇用契約でなく請負(又は委任)契約を打診することである。

その方が他の会社とも契約ができて、仕事の質と量は上がる。

第3に、これはこれまでも強調していることであるが、血の滲む自己投資を続けることである。上司や同僚が圧倒的に追いつけないくらいの専門性と広い視野を身に着けるべきだ。

「そんなことができる時間がない」「お金がない」という声もあるかもしれない。

しかし、幕末や明治初期は、書籍も海外の情報もなく、志ある若者は、書物を書写して、厠の中でもろうそくの火で勉強したのだ。

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現在のようにインターネットで多くの情報が手に入る時代、図書館に行けば無料で多くの本が読める時代。お金がなくても勉強はできるのだ(もっとも以前の原稿でも書かせて頂いたが日本メディアに頼っていては視野が狭くなる問題はある)。

このように書いている私もまだまだ甘い。どれだけ嫌われようとも血の滲む努力を続け徹底的に出る杭になって、起業とイノベーションを促す触媒となっていきたい。

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