ハリウッドの「日本人」映画監督シモサワ・シンタロウ

GoGetterz Voice 新企画 The Voicers Report は、世界各地で活躍する10人のゴーゲッターで構成された The Voicers が各々の活躍の現場から情報発信をしていきます。
今回は、日英バイリンガル・ジャーナリストの庄司かおりさんです。

 

先日、ハリウッドで活躍中のシモサワ・シンタロウ監督にお会いしました。
ちょうどアメリカ大統領選の結果待ちの日で、合衆国が真っ赤(共和党のシンボルカラー)に染まっていくのをスマホのスクリーンでお見せしたら
“Oh No! I wish I hadn’t seen that!” (ああ、イヤだ!そんなもの、見るんじゃなかった!)と本気で嘆いていました。
選挙開催のなか、何人か来日する監督や俳優にお会いしましたがみなさんの落胆、憤りぶりが半端でなく、これから共和党政権とトランプ 新大統領が、リベラルを掲げるハリウッドにどのような影響を与えるのか、予測がつかずに恐ろしさが先行している感じでした。

シモサワ監督は長年、プロデューサーを務めた職人肌の人。
ハリウッド版「呪怨」(“The Grudge”) を手がけてその後もホラーやサスペンスの小品を作り続けてきました。

今回、彼にしては珍しく豪華キャストと 高予算を集め、”Misconduct” (邦題:「ブラックファイル」2017年1月7日公開)で監督デビューを飾りました。

「日本人」映画監督シモサワ・シンタロウ

現場ではじめてキャストと顔合わせをしたとき、女優のマーリン・アッカーマンから
“When they told me that the director was Japanese, I thought it would be someone who wouldn’t speak any English. Not that I’m racist or prejudiced or anything.” (監督が日本人だと聞かされたときは全然英語ができない人かと思ったわ。別にわたしは人種差別派でもなんでもないのだけれど)と言われたのだとか。
そういう反応はよくあることで、名前が日本語だとどうしても英語ができないんじゃないか、と思われがちです。
僭越ながらわたしもそういった反応によく合います。
それでも監督はシンタロウという名前を「クールだ!」と言って、彼の英語 名のEdwardを 名乗る気はないのだとか。
“This is my identity.” (これは僕のアイデンティティーだから)と断言していました。

ハリウッドの映画関係者、というとひたすらゴージャスなイメージですが日本人としてアメリカの映画界を渡っていくのは難しいのです。
トランプ政権になればますますPOC (People of Color)と呼ばれる白人以外の人々は仕事がしづらくなりそうです。

シモサワ氏はシカゴ生まれ。
日本食 レストランを経営するためにアメリカに渡ったご両親のもと、主に英語を喋りながら育ちました。
“I had to go to Japanese school on Satudays which was a real bummer.” (毎週土曜日には日本語学校に通わなくてはならずそれがいやだった)と振りかえります。
しかしそのかいあってバイリンガルで仕事ができるようになり、「呪怨」リメークのプロデューサーに大抜擢。
今はあまり日本語は話せないけれどリスニングと簡単な通訳、それから日本の事情に詳しいのでやはり重用されているようです。

“I was told that my Japanese sounded effeminate, and since then I’ve really become self-conscious about speaking in Japanese.”(僕の日本語は女性的に聞こえると言われてそれ以来日本語で喋るのを意識してしまってダメなんだ)と監督。
“It’s probably because my mom always spoke in Japanese and I grew up listening to her.” (それは多分、母がいつも日本語で話していて僕はそれを聞いて育ったから。)

2017年1月7日公開 映画 “Misconduct”

ブラック・ファイル 野心の代償
2017年1月7日(土)より新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2015 MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.ALL Rights Reserved.
【提供】カルチュア・パブリッシャーズ> 【配給】松竹メディア事業部

そんな監督の”Misconduct”は重厚な法律サスペンス。
1990年代を彷彿とさせる物語展開が見どころで巨悪マネーとか若手弁護士の野望とか、彼の元カノがしかけるハニー・トラップとか、なんとも懐かしい香りがします。

主演のふたりがなんとAl Pacino アル・パチーノとAnthony Hopkinsアンソニー・ホプキンス。
若手は今話題のイケメン俳優Josh Duhamel ジョッシュ・デュハメル。

ブラック・ファイル 野心の代償
2017年1月7日(土)より新宿ピカデリーほか全国公開
(C)2015 MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.ALL Rights Reserved.
【提供】カルチュア・パブリッシャーズ> 【配給】松竹メディア事業部

“I didn’t want to make anything that was Japanese-y, but I think there are elements of the Japanese storytelling technique in there.” (いわゆる日本的な作品は作りたくなかったけれど日本的な話法は入っていると思う。)

その話法とは「間の取り方」
監督の尊敬する日本人監督の三池崇や園子温に共通する「沈黙」と「間」を取り入れながらクラシカルなハリウッド映画を仕立てたシモサワ監督。
アメリカン・カルチャーに完全に染まることなく、祖国と母上を大事にしながら仕事を続ける彼に、今後の自分のあり方にもヒントをもらった気がしました